介助者(介護する側)にとって、介護は重労働である。寝たきり老人や手足の不自由な人を車椅子に乗せたり、トイレに連れて行ったり、風呂に入れたりしていると、腰や肘、手首を痛めやすい。理想や情熱をもって介護の世界に入ってきた人たちが挫折する大きな理由の一つに、そうした重労働があげられるのはご承知のとおりである。
その重労働から介助者を解放するべく開発されたのが、日本ロジックマシン(富山県小矢部市、森川淳夫社長)の「百合菜(ユリナ)」だ。
◎日本ロジックマシンの「百合菜」(ユリナ)
百合菜を開発するにいたった動機について、日本ロジックマシン社長の森川さんは次のように語っている。
――介護ロボットを開発し始めた動機は15年前。息子が幼稚園に通っているとき、息子の友達のお母さんが腰を痛めて入院しました。このお母さんの仕事は老人専門病院のヘルパーさんでした。小柄な方ですが、毎日自分より重い人達の世話をしていました。長い間、入院し、ようやく回復した後、勤めていた病院へ行ったところ、体力のない人は使えないと再就職を断わられたそうです。この事実を聞きなんとかしなくてはと思い、私にできる事をずっと考えてきました(同社ホームページから)。
その結果、この問題の解決には介護者を移乗させる際の「力」の負担を軽減することが不可欠と森川さんは考えるようになる。介護者を移乗させる器具には車椅子をはじめ、
リフトやリクライニング機能のついたストレッチャーなどがあるが、どれも介助者に負担がかかる。
そこで、もっと根本的な負担軽減が必要と、ケアロボットの研究開発に取り組んだ。そして、いくつかのプロトタイプやモデルチェンジを経て登場したのが「百合菜」というわけである。
理想を追求したケアロボット
百合菜は、要介護者をベッドから車椅子、簡易トイレ、簡易浴槽などに簡単に移動させることができる。意識のしっかりした要介護者であれば、介助者の補助がなくとも自分でロボットの操作が可能である。
百合菜は背もたれと座面をフラットにすることで簡易ベッドになる。また、背もたれを立てることで電動車椅子としても利用できるので、一人で移動することも可能だ。さらに、音声認識装置を搭載し、声での動作指示もできるので、入浴介助時のような両手を使えない状況下では非常に便利だ。高齢者が使いやすいよう、方言での音声登録もできる。
百合菜は随時改良を加えており、最新型ではベッドの乗り降りをより安全かつスムーズにできるよう、ベルトコンベアを搭載している。これにより、ベッドから移動する際には、完全に体が乗り切るよう、ベルトコンベアで体を引き込む。ベッドに乗せるときには逆の動きをしてベルトコンベアでその人を少しずつベッドに戻す。
百合菜の大きさは幅670×奥行980×高さ1270㎜。抱き上げハンドは幅1600×奥行440㎜。体重80kgまでに対応し、ジョイスティックで前後左右への移動のほか、その場での回転もできる。したがって、狭い場所での移動もスムーズに行なえる。
本体重量は160kg、電源は家庭用の100Vが使えるので、介護施設だけでなく、ホームロボットとしても利用できる。6時間の充電で約10時間稼働するので、夜や空き時間に充電しておけば使い続けられる。
「こうしたことが出来る介護ロボットは世界初。介護サービスでは、介護をする側のケアも不可欠。なぜなら介護は力仕事、重労働で、腰や手首、肘を痛めやすいから。体を痛めて休むと、他の介護職に負荷がかかり、悪循環になってしまう。そうしたことのないよう、これからの時代の介護のパートナーとして百合菜を活用していただき、負荷を少なくし、明るく楽しく仕事が出来るようにして欲しい」(日本ロジックマシン営業課長の高田善隆さん)
筋力をサポートするタイプのケアロボットは現在、CYBERDYNE社のHALを筆頭に、さまざまなタイプが登場している。その多くは、要介護者や介助者の体に装着することによって上肢や下肢の筋力をサポートするものだ。
しかし百合菜は、介助者の代わりができる機能を持っており、ある意味で理想に近いケアロボットといえる。
百合菜は現在、日本ロジックマシンのある富山県を中心に全国の介護関連施設での利用が進みつつあり、評判はおおむね良好だ。
□問い合わせ先□
株式会社日本ロジックマシン/オフィス・展示場
〒939-1119 富山県高岡市オフィスパーク5番地
Tel:0766-63-5851 Fax:0766-63-5852
ホームページ:http://j-logicmachine.jp
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