日本は波力発電に取り組むべきではないか? -2-

M.宮城
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We shouldn't start Wave Power Generation now? -2-

 

これまで研究・実験が行われた波力発電の方式は、大きく3つの方向に分かれます。

1)波を空気エネルギーに変換する方法
 (波の上下運動を空気圧に変換し空気タービンを回すなど。国内の実験ではこのタイプが最も多い)
2)機械的なエネルギーに変換する方法
 (波で振り子状の機械を動かすなど、油圧式運動に変換して発電する方法)
3)水の位置エネルギーまたは水流エネルギーに変換する方法
 (防波堤に打ち寄せる波で水位高低差を作り出しタービンを動かすなど。またはウェーブドラゴンのように水流を利用)

 調べてみると、国内でも過去に山形県沖、千葉、福島、三重、北海道とあちらこちらで多数実験が行われています。
因みに東北電力はその内の複数を担っているようです。東北電力さん、目立たないところで頑張っていますね。

そしてこれら国内外の取り組みで共通する技術的課題は耐久性。
波は基本的に水の運動エネルギーであるから駆動の起点部分は海面か水中にあり、一方それを電力へ変換するための機構は海上にあります。よって水と空気との密度の違いだけでなく、台風・高波への耐久性能、加えて腐食や海洋生物による故障を出来るだけ避ける仕組みも必要です。
しかし耐久性については、「解決するのは容易だ」というのが研究者達の見解のようです。

 最大の問題はやっぱりコストの高さ。
例えば風力発電は1kw当り4円程度で、太陽光発電は20円。波力発電は実用化された場合を想定すると30円~100円。その後コスト削減に努力したとしても、10円を切る事はないだろうという予想なのです。

 

うーーむ。。
確かに陸上の発電所建設に比べ海上工事は建設費が割高。台風などで計画通り進められないとうリスクもあるでしょうが、コスト問題は本当に解決できないものなのか?
何年も前の話ですが、日立製作所や三菱重工の原子力格納容器の製作現場や、いくつか原発の建設現場を取材で訪れた事があります。見上げるような大規模且つ精巧な構造物、卓越した数多くの製造・機械技術を思い出すにつけ、「解決不可なはずはないでしょう!」という気がしてなりません。

また参考にした資料の言葉を借りると、背景にはこのような現状もあるようです。
「設置の条件等、(コストの)試算根拠は、それぞれ開発を担当した機関等によるもの。...(中略)...コスト比較に当たっては、同一の波浪条件の下で比較するのが望ましい。しかし、各方式によって、候補地点となる条件(対象とする水深や地形的な条件、最適規模など)が異なるため、その経済性を一律に比較検討することは難しい。」

例えば現在使われている送電線は、たった5m引くのに2億円かかるという話です。しかし、これも今一納得がいきません。
果たしてそのコストの中身は?
世の中はデフレで、どの業界も少ない利幅の中から新しい価値を見出そうというムードが高まっていますが、電力業界だけはいまだに高成長時代のコスト計算のままなのでは?と思うほどです。
誰もそこに疑問を投げないこともある意味不思議に思えます。

またもや古い「護送船団方式」所以のマイナー思考が働いている気がしてならない(早い話、どこかの誰かがハイリスクを覚悟で先に踏み出してくれるのを待っている)...。
と考えてしまうのは私だけでしょうか?

まあそんな個人的意見はどうでもいいとして、太陽光発電の約5倍の高コストだとしても、水の力を利用する波力発電はそれを差し引いて余りある可能性を秘めています。
参考サイトによれば、波力エネルギーは波の高さの2乗およびその周期に比例し、仮に高さが1mで10秒周期の波であれば約5KW/m。波の高さが5mになれば、約125KW/mのエネルギーを得られるとのこと(港湾空港技術研究所による試算)。つまり言いたい事は、自然エネルギーの中ではずば抜けて高効率の発電を期待できるという点です。

 本格的な発電設備の建設は、確かに相当難航するでしょう。
しかしながら、例えば海面でではなく海底に設備一式を設置する方向で海流を利用できないか?(台風・高波への対応策として)とか。。。あるいは腐食し易い機械式タービンの代わりに圧電素子技術を合わせ技で使ってはどうか?など、そろそろ新しいアプローチに乗り出すべきではないでしょうか?


とにかく日本は四方どころか八方が海で、しかもエネルギー問題はどっかりと鼻っつらに鎮座しています。
何もないなら諦めますが、日本には優れた頭脳、卓越した技術、そして協調力のすべてがあります。
今こそそれら総力を合わせ、この危機的状況を乗り越え且つこの分野で世界をリードしていっていただきたいと、切に願います。


熱く語り過ぎて大変長くなってしまいました。
最後に、この猛暑の中、想像を絶する危険に立ち向かいながら、福島原発の現場作業にあたっておられる大勢の作業員の皆さんに心から深い感謝の言葉を贈りたいいと思います。

本当にありがとうございます。

 

【参考サイト】

WaveDragon(デンマーク) (英語)

OPT社(イギリスの海洋エネルギー技術開発) (英語)

PG&E社の波力発電実験 (英語)

「ヴォイニッチの科学書」(Chapter-207 波力発電の現状) (日本語)

「GLOCOM 国際大学」(波力発電の現状) (日本語)

 

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このページは、M.宮城2011年7月12日 17:39に書いたブログ記事です。

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